ケンジ制作記4 (すえつぐ)

はじめまして。
演劇工場で演劇を学びたい!
そう思って移住してきました。
こってこての九州人、「すえつぐ」と申します。

今日お話させていただきたいのは「冬の松本の寒さ」についてです!

私が長く暮らしていた所は、11月でも扇風機が側にある、そんな所でした。
雪が降れば珍しくて皆大はしゃぎする、そんな所でした。
なので。ご察しの通り、私は毎日松本の雪に大はしゃぎしています。
雪を踏むと聞こえる「きゅっきゅ」の音。この音が大好きで、誰にも踏まれていない雪道をいつも歩く。そんな日々を過ごしています。

ただ。
寒いです。もう泣きたくなるくらいに、いや、流したら涙が凍っちゃう気がして泣くことすらできないくらいに松本の空気は冷たく寒いです。

でも、「松本がたまらなく寒い」から気づけたことが沢山あります。
今日はその一つ、宮沢賢治の「氷河鼠の毛皮」のある場面を挙げさせていただきます。

「黄いろな帆布の青年は立つて自分の窓のカーテンを上げました。そのカーテンのうしろには湯気の凍り付いたぎらぎらの窓ガラスでした。たしかにその窓ガラスは変に青く光つてゐたのです。船乗りの青年はポケットから小さなナイフを出してその窓の羊歯の葉の形をした氷をガリガリ削り落しました。削り取られた分の窓ガラスはつめたくて実によく透とほり向ふでは山脈の雪が耿々とひかり、その上の鉄いろをしたつめたい空にはまるでたつたいまみがきをかけたやうな青い月がすきつとかゝつてゐました」

この場面に似たような体験をしました。
朝起きて換気しようと思ったら、窓についた水滴が凍って窓ガラスが開きませんでした。
そしてガラスには白い氷のモヤが一面にかかっており、外の景色が全く見えませんでした。

この体験があったからこそ、この場面が想像でき、青年がナイフを用いる意味が分かりました。

松本の寒さが教えてくれる沢山の気づきや生きる知恵。
今日も松本の地で新しい発見と出会いたい。
凍って鍵のさせない鍵穴にお湯をかけて解凍し、すえつぐは今日も自転車に乗って極寒、魅力あふれる松本の地を馳せめぐります!

(すえつぐ)


まつもと演劇工場メンバーによる「ケンジ制作記」です。
ケンジ旅行記についての詳細は「公演情報」ページをご参照ください。

まつもと演劇工場5期生・作品『ケンジ旅行記ー道々の劇場ー』

2017年1月23日