まつもと演劇工場

【レポート】宮沢賢治ビブリオバトル開催しました!

 

2月25日の土曜のお天気のよい、お昼時、

源智の井戸のほとり?の炭火珈琲が美味しい喫茶店、半杓亭さんでまつもと演劇工場プレゼンツ宮沢賢治ビブリオバトルが開催しました。

 

↑(今回のビブリオバトルの告知ページです)

ビブリオバトルというものを、まつもと演劇工場では初めての試みだったのですが、

先のわからないライブ感に会場にいたメンバーは、ドキドキはらはらを共有した不思議な一体感を最後は醸し出しておりました。

そんなビブリオバトルの様子をご紹介したいと思います。

本来ビブリオバトルは一冊の本をプレゼンしあうものらしいのですが、今回は宮沢賢治の作品しばりで4人のバトラーがひとつづつ作品を持ち寄り、その作品についてバトルしてもらいました。

 

 

今回の司会、進行はまつもと演劇工場も2年目であります、松本平が生んだ無添加娘のヨシザワさん

以前、図書館にいた経験もありビブリオバトルを思いつき、提案してくれて、

物腰が柔らかいながらも、的確な進行で場を和ませてくれました。

 

 

はじめなんとなく、緊張なのかなんなのか、そわそわしてるバトラー席。

 

トップバッターは、演劇工場は今年はじめてのスエツグさん

 

 

スエツグさんは九州から神奈川に大学で進学された後、演劇がしたい一心で松本に移住されました。

そんなまっすぐな彼女が選んだ作品は「祭りの晩」

祭りの晩、少年が見世物小屋に入ると、そこで山男に出会って―というお話。

「祭り」について「山男」について、自身の考えを交えつつ、すらすらとよどみなく話す姿にびっくり!

 

 

「(プレゼンの長さが)なかなか一定にならなくて、難しいです~」なんていっていましたがなんのなんの!

タイマー終了の合図の音と同時にぴたっ!と終わり、オーディエンスからは思わず拍手とため息と「トップバッターがハードル上げないで!」という抗議(笑)の声が上がったのでした。

 

後で聞いたところによると、前夜に練習を繰り返していたそうで。この日の睡眠時間は1時間ほどだったそう(!!!)。

彼女のひたむきさ、一生懸命さが存分に伝わる発表でした。他県から移住してきた自分自身を山男になぞらえてとらえている姿に、演劇にかける思いと孤独、真剣さがにじみ出ていて胸が熱くなりました。

 

続いてのバトラーは演劇工場は0期から参加されているイズミさん

 

 

イズミさんは音楽の先生もされていて、音楽が複雑に絡み合う演劇工場の座組の中では、縁の下の力持ちで頼りの存在なのです。

初任給で賢治全集を購入したというエピソードを持つ賢治好きのイズミさん。

「山男ネタがかぶっちゃったなあ」といいながら紹介してくれたのは「紫紺染について」

そんな作品があるのですか!というさすがのチョイス。

当時、衰退しつつあった盛岡の特産品・紫根染めが再度見直される出来事があり、賢治も学校で研究にあたっていたそう。正しくは「紫根(しこん)染」と表記するようですが、賢治はあえて「紺」の字をあてているそうです。

この草木染の職人がいなくなり、製法が分からなくなっている・・・というところから話は始まります。どうも山男だけが作り方を知っているらしい、呼び出して聞いてみよう!と学校の先生は考えます。

でました、「山男」

イズミさんによるともう一つ、そのものズバリ「山男の四月」という作品もあるそうです。(そうそう、今回の公演で取り上げる「なめとこ山の熊」にでてくる淵沢小十郎も「山男」ですね)

 

 

 

やってきた山男は、意外なことに紳士風のりっぱな姿。

集まっていた紫根染め再興に熱心な人たちは彼の風貌に驚きながら、食事や酒を勧めます。山の模様など聞きつつ、肝心の紫根染めについて話を振ると、山男は「よく知らない」。みんなはがっかりして飲み食いしていると、山男は酔っ払って

「へろれって、へろれって、けろれって、へろれって」

と騒ぎ出します―。
いかにも賢治らしい、独特の言い回しを抜き書きして、

「さあ、紫根染めの製法はどうなったのでしょうか。読んで確かめてみてください」というところでこちらもほぼ時間ぴったりでタイムアップ。

賢治のことなら5分では足りない、まだまだいくらでも話せそうなイズミさんでした。

 

演劇工場からは最後の発表!ナガハマさん

 

 

3人目は、群馬からIターンし「まつもと歌舞伎」に感銘を受けまつもと演劇工場に参加されたナガハマさん

そんなナガハマさんは、小学3年生の頃、教科書で読んだという「オツベルと象」を紹介してくれました。
「いまでいう『ブラック企業』の社長・オツベルのもとで働くことになった象の話。つらいならやめればいいのに、不思議ですねえ、最後には逃げ出した象も『さびしそうに』わらっているし」

とサラリーマン時代で培ったわかりやすく、かつユーモア溢れるナガハマ節を聞かせていましたが・・・

 

 

「小学生の僕が一番気になったのは、オツベルが食べる『六寸ぐらいのビフテキ』と『雑巾ほどあるオムレツ』です」

!!!

そして取り出したのは雑巾!六寸=18センチの定規!!

「ビフテキの18センチは、長さじゃなくて高さですね!そうとうボリュームありますね!」

少年心をいつまでも忘れない、飲食店情報にくわしいナガハマさんらしい、食べ物ネタ。

教科書にも載っているせいか、会場にいる方のほとんどが知っていた作品でしたが、なぜかもう一度読み返してみたくなりました。

 

そしてオオトリを飾るゲストの月元健伍さん!

 

 

月元さんは半杓亭さんで隔月、「やつはみ喫茶読書会」という読書会を開いておりましてそこで主宰をされております。

小説家志望でもある月元さんがどんな賢治本を紹介してくださるのか興味津々でしたが、ご本人曰く「飛び道具を用意しました!」と取り出しましたのは、

 

 

「ミヤザワケンジ・グレーテストヒット」(髙橋源一郎・著)

まさかの宮沢賢治が書いてない!!

でもいいんです!今回のテーマが宮沢賢治なので、ケンジならばOKなのです!

音楽CDでいうとトリビュート?カバーアルバムといった形でしょうか・・・

賢治のファンの自認する著者が、賢治作品24編をまったく新しいストーリーに編み直した連作小説。

じつはこのアプローチ方法、演劇工場公演に通じるものがあります。
工場生、長﨑・深沢両名の書き下ろし作品はそれぞれ賢治のある作品(群)をモチーフにしているのです♪

ここに集まった観客が目を丸くしながら、興味深く自分の好きなあの作品は入っているのだろうか・・・と想いを馳せていたでしょう・・・

 

 

全てのバトラーのプレゼンが終わり、ここにいるすべての人が一票もって投票する時となりまして

ここで一番票数が多いものが今回このバトルでの「チャンプ本」となります。

投票の緊張の間をおいて、

 

今回、選ばれし「チャンプ本」は・・・・・

 

 

 

月元さんの「ミヤザワケンジ・グレーテストヒット」(髙橋源一郎・著)になりました!

(どうやらご自身が一番びっくりしている時の図↑)

 

全ての作品に票が入ったなかでの「チャンプ本」。

実に見ごたえのあるバトルでございました。

月元さんも自身のブログでこの時の様子を綴ってくれております。↓

http://kasuka.hatenadiary.jp/entry/2017/02/26/001338

 

 

他のバトラーも思わず祝福の拍手!!!

たった1時間程の時間でしたが、このビブリオバトルを通してケンジの魅力を超えて感じる何かがありました。

本当にご参加いただいたみなさま、半杓亭さん、本当にどうもありがとうございました!

 

最後に・・・

今回はたまたまビブリオバトルという、演劇とはまた違った切り口で、それぞれがそれぞれの切り返し方で、その場、その場で生まれたものを共有して・・・自分がつくると同時に、まわりが作ってくれるのを大いに実感する体験でした。

そんな環境、繋がりにご縁に感謝の気持ちばかりです。

 

 

ちなみに当日、半杓亭さんでおやつもご用意くださいました。

にゃー!!!

猫でございます。

きっとこれは宮沢賢治の作品にでてくる猫さんですよね。

そんなお心遣いにも感激しながら、「ケンジ旅行記ー道々の劇場ー」まであと2週間!!

皆様の熱量もお借りして、こちらも着々と稽古が加速していきます!!お楽しみに!!

 

月元さんのお知らせ

やつはみ喫茶読書会が4月1日土曜日に半杓亭さんで開催されます。

↓↓詳細は月元さんのブログに書かれております↓↓

http://kasuka.hatenadiary.jp/entry/2017/04/01/153000

おいしいおやつを食べながらどなたでも気軽に参加できる読書会です。

事前予約が必要なようなので、ご興味ある方はぜひ月元さんにご連絡してみてください!

↓やつはみ喫茶読書会のTwitterはこちら↓

(写真:ナスカ 文:ちあり/ナスカ)


ケンジ旅行記についての詳細は「公演情報」ページをご参照ください。

まつもと演劇工場5期生・作品『ケンジ旅行記ー道々の劇場ー』

2017年1月23日
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